
今から15年前、長岡市を訪れ業界紙編集長の紹介で吉沢工業鰍フ吉澤昭宣社長に会った。その時「板紙(ボール紙)は有用な工業素材だから加工分野においても研究の対象になるはず。」と言われた。当社は長年、板紙を打抜く抜型製造を専業とし、得意先の紙器生産における品質および生産性向上に貢献する努力をしてきた。
しかし、「刃潰れで紙の切断面から紙粉が出る」、「紙を折り畳むと表面にひび割れが入る」などの不具合に、素材の紙が悪い、打抜機械と操作が悪い、いや抜型が適正でない、と三者で責任回避し合い、結局その度に抜型を修正しながら何とか納まれば、それで良し、と済ませていたのが現状であった。
何が悪く、何が良かったのか?基本的なことを知りたい、勉強したいと思い始めたころ長岡技術科学大学機械系の永澤茂准教授に会った。研究を開始するには、まず実験装置が要るので型抜き試験機を製作し、基礎になるデータ集めから取りかかった。解析が進むにつれ福澤康教授の研究室からも協力を得られるようになり、企業側は当社のほかに刃材製作や打抜機製造会社が参加し、製紙会社から素材の提供を受けて打抜き技術を総合的に研究することになった。こうして10余年の間には数多くの学会発表・学術論文や特許出願などを行った。
当社から見た産学共同の利点は何か?
第一に、研究機関としての大学が、研究室を持たない当社の基礎理論に基づく開発を可能にする。第二に、公的機関としての大学の実験データを示す事ができる。その他にも、私達の研究課題で修士、博士の学位を取得して高専や大学の教員になった人、わが業界に進んだ人たちがいるので人材教育の視点でも学と産の双方に意義がある。紙の打抜きから始めた研究も、近年、素材の複合化や樹脂系材料を含めるようになり、電子部品など紙器以外の工業製品市場にも広がりを見せている。
共同研究で要素技術を積み重ねて得た“種”を製品にして花を咲かせ実を生らせるのは企業の役割であり、新製品の実用化と新分野の事業を展開するため、平成16年に長岡市の育成施設“ながおか新産業創造センター”に入居。特に地域状況や分野に合わせた協力者の紹介など情報ネットワーク作りを中心とした支援体制は事業計画を進める上で効果的である。その成果もあって、2008年、新たな拠点を長岡オフィス・アルカディアに設けて育成施設から巣立つことが出来た。
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板紙材の型抜加工−入門編− |